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上高地を楽しむ

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アカゲラの献身的な子育て

野鳥の暮らす森に囲まれて ~山のひだや~

アカゲラの献身的な子育てのイメージ

やがて巣立ち成鳥へ

「キョキョキョッ、キョキョキョキョッ」
白樺の枯れ木に開けられた小さな丸い巣穴から、雛が可愛らしい顔を覗かせ親鳥を呼んでいます。しばらくすると頭の部分が赤くて、黒い羽の後部に白い斑点がある小鳥が巣穴の近くに止まりました。アカゲラです!どうやら餌を運んできたようですよ。
赤い頭はオス、その色がないのがメス。自然界ではオスのほうがカラフルな場合が多いような気がします。

ここは明神池の近くに佇む山のひだや。客室2階の窓からちょうど目の高さにアカゲラの巣が見えました。
警戒心の強い小鳥が宿のこんな近くに巣を作るなんて本当に珍しいことなんだそうです。

親鳥が飛び立つとすぐにまた「キョキョキョッ、キョキョキョキョッ」
「もっと食べたいよぉ」
「どこ行っちゃうの?早く戻ってきてぇ。お父さん!お母さん!」
とでも言っているのでしょうか…。

アカゲラのオスとメスが入れ代わり立ち代わり巣と餌場を往復しています。
育ち盛りのわが子のために餌を運び続ける光景は見ていて微笑ましく、時間が経つのを忘れて観察してしまいました。
ずっと見ていたいけれど、いっぱい食べて大きくなって上高地の空を自由気ままに飛び回るんだよ…。

この日の2日後に雛は無事巣立っていきました。1ヶ月ほど親鳥と行動を共にして自然の中で生きる術を学ぶようです。今頃はもう独り立ちしているかもしれませんね。

山のひだやのカフェ・ド・コイショでは、オリジナルの野鳥マップも用意しているとのこと。明神方面を訪れた際はコーヒーブレイクに是非立ち寄って、アカゲラの話を聞いてみては?心優しいおかみさんと可愛いパティシエールさんが、まるでわが子のことのようにアカゲラちゃんの話をしてくれると思います。

*なるべく自然の営みを邪魔しないようにとの配慮から、雛が巣立ち独り立ちする頃までの間広くお伝えすることは遠慮しておりました。
(2019.6.25取材)

キツツキという鳥はいない?

キツツキと言えばどんなイメージですか? 木の幹をトントントントンとリズミカルに叩く鳥、一般的にはそんなイメージかもしれません…。
でも実際はタララララララッと目にも止まらぬ速さで木を叩いているんです。そんなに高速で叩いて頭への衝撃は大丈夫なんでしょうか…ちょっと心配になりますね。これは専門用語でドラミングと言って、求愛や縄張りを主張したりする行動なんだそうです。

でもご存知でしたか? 実はキツツキという名前の付いた鳥はいないんです!
キツツキとは分類上の名称で、アカゲラ・オオアカゲラ・コゲラ・アオゲラといったような鳥がキツツキ目キツツキ科に属する鳥なんですね。

そもそも何故キツツキと呼ばれるのでしょうか…。
木を突っつくから? 古くはテラツツキ、ケラツツキが語源というような説もありますが、詳細は分かりません。いずれにしてもキツツキは漢字で「啄木鳥」と表記します。木を啄む(ついばむ)鳥という意味ですが、習性をよく表していますね。ちなみに俳句に詠まれる「啄木鳥」は秋の季語になっています。

上高地にはどれくらいの鳥がいるの?

上高地ビジターセンターの前田篤史さんにお話を伺いました。動物関係の専門学校で学び日本野鳥の会にも所属している前田さんは、上高地で20年以上にわたって活動を続けています。

「上高地では140種類くらいの鳥が観察されています。一年通して生息しているのが留鳥(りゅうちょう)で、今回観察したアカゲラも留鳥です。東南アジアなどから渡って来てここで子育てをし、また秋に戻っていく鳥が夏鳥で、両方合わせた約50種の鳥がいま上高地で子育てをしています。鳥によっては卵を温めるのはメスの役割ですが、アカゲラはオスメス交替で協力して雛を育てます。」
「これからの夏場は、巣立ちをした5~6羽の雛鳥を連れて飛んでいるキビタキやコガラ・ヒガラなどの集団を、あちらこちらで見ることができますよ。」

上高地の鳥について知りたい方は、上高地ビジターセンターをぜひ訪れてみましょう。展示やライブラリー検索で詳しい情報を得ることができます。その他にも上高地の歴史や自然、動植物や昆虫などに関する書籍・デジタルコンテンツ・展示物などを閲覧することができます。またガイドウォーク(要参加費)も行っていますので、気軽に参加してみてはいかがでしょうか。

(上高地の散策シーズンによく見られる野鳥)
マガモ・オシドリ・キジバト・キセキレイ・セグロセキレイ・カワガラス・コゲラ・アカゲラ・オオアカゲラ・カケス・カッコウ・ホトトギス・ミソサザイ・ゴジュウカラ・キバシリ・ウグイス・メボソムシクイ・エゾムシクイ・コガラ・ヒガラ・シジュウカラ・エナガ・ルリビタキ・コマドリ・コサメビタキ・サメビタキ・キビタキ・アオジ・アカハラ・オオルリなど
(出典:上高地の野鳥 増補改訂版/前田篤史著・ほおずき書籍)
写真提供:前田篤史氏(上高地ビジターセンター)

■お問い合わせ
上高地ビジターセンター
〒390-1516 長野県松本市上高地
TEL 0263-95-2606
https://www.kamikochi-vc.or.jp/

(2019年7月22日掲載)
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