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上高地を楽しむ

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咲き誇る花々を訪ねて…河童橋から清水川、小梨平へ

ガイドと歩く上高地 ~上高地白樺自然学校~

咲き誇る花々を訪ねて…河童橋から清水川、小梨平へのイメージ
5月から6月にかけて上高地は芽吹き新緑の季節。柔らかな光に緑が萌え、穏やかで爽やかな風を肌に感じながら散策するには絶好の時期です。散策道沿いにはここかしこに可憐な花々が咲き誇っています。カメラ片手にそのかわいらしい姿を撮りながら歩くのも上高地散策の楽しみですね。
でもその花、何て名前なんでしょう?
花の図鑑があればすぐ確認することもできますが、全部の花が載っているとは限りませんし、似たような花だけど本当に同じ花かどうかわからないこともありますよね…。
そんな時は上高地を知り尽くしたガイドの方と一緒に歩くのをお勧めします。花の名前だけでなく、特徴や見分け方なんかもわかりやすく教えてもらえるので、上高地散策がより楽しくなっちゃいます!

それ花びらじゃないの!? 装飾花って?

今回は、上高地のシンボル・河童橋周辺のガイドツアーに参加しました。
案内していただいたのは上高地白樺自然学校のベテランガイド松田敏雄さん。

上高地ホテル白樺荘の玄関前を出発してすぐ、河童橋につながるスロープ脇に早速白い花を見つけました。「葉っぱと花の形を近くで見ればわかりますね。皆さんもよくご存知のサクラです。白い花で、上を向いて咲くのが特徴です。ミヤマザクラと言います。」

六百山を仰ぎ見ながら河童橋を渡り、梓川左岸の歩道を上流に進んでいきます。河童橋から見える穂高連峰の説明を聞きながら視線を落とすと、ニリンソウが咲いていました。
ニリンソウと言えば明神周辺や徳沢あたりの群生が見事で、例年だと5月中~下旬がピークですが今年はまだまだ十分見頃のようです。
このニリンソウ、白い花びらのように見えるものは実は萼(がく)片で一般的には5枚のものが多いようですが、6枚7枚それ以上のものもあるそうで、松田さんは12枚のものを見たことがあるそうです。色も淡いピンク色や緑色のものもあるので、探し歩くのも楽しいですね!
「ニリンソウの葉っぱの形をよく覚えておいてください。この先よく似た葉っぱの毒草が生えています。」

ニリンソウの葉に酷似した毒のある植物とは?

清水川が見えてきました。上高地の各施設が飲料水としても利用している湧き水が流れる川で全長約300m、どんなに大雨が降っても濁らないとのこと。小さな橋の上からは透明感にあふれた水中に梅花藻(バイカモ)やイワナの姿が見られます。顔を起こすとオオカメノキが白い花を咲かせていました。
「花はどれだと思いますか?実は真ん中あたりに密集しているのが花なんです。よく見ると周りの大きな白い花は雌しべも雄しべもありません。これは装飾花といって虫を呼ぶためのものです。」

「先ほどのニリンソウによく似た葉っぱがここにありましたね…。これは猛毒のトリカブトの葉です。もう背丈も伸びて初夏には紫色の花が咲きますが、生え始めはニリンソウと見分けがつかないくらいです。」
ニリンソウはおひたしなどの食用にしている地域もあるそうで、トリカブトの葉を間違って食べた中毒も毎年のように起きているので十分注意が必要です。上高地は中部山岳国立公園内なので、もちろんニリンソウもトリカブトも採って食べることはできませんから安心ですが…。

上高地の見え方が変わります!

カラマツの新緑やコメツガの新芽、シラカバとダケカンバの見分け方などの話を聞きながら小梨平へ。このあたりではかつてリンゴ栽培が試みられた際に台木としてズミ(コナシ)を利用したのだとか。遊歩道を挟んで反対側はシダ植物が生える原生林。カラマツが植林された人工林との対比でその違いがよくわかります。
上高地の地形や成り立ちの話なども聞きながら、一行は上高地ビジターセンター前に到着。ガイドの松田さんの話に引き込まれ、有意義なあっという間の1時間が過ぎました。

三重県からお越しのご夫婦は初めての上高地だそうで、「大正池でバスを降りて河童橋まで歩いてきましたが、途中見かけた花がどんな花かわからず、名前がわかったら楽しいよねって話していたんですよ。」「ガイドツアーに参加していろんな花がわかって嬉しいです!今度はぜひ泊まりで来たいです。」奥様は熱心にメモを取りながらカメラにも収めていらっしゃいました。

中学の同級生だという北海道からお越しの女性お二人。
「以前は日帰りでゆっくりできなかったので、今度は泊りで来たいよねって言ってたんですよ。」今回は上高地ホテル白樺荘に2泊してゆっくり上高地を満喫しているようです。「昨夜ナイトツアーに参加して楽しかったので、昼間のガイドにも申し込みました。この景色を見ているだけでもいいですけど、ガイドの方の話も分かりやすくて、細かいところまで解説していただいたので見方が変わりましたね。参加して良かったです!」

(今回のガイドツアーで出会った草花)
ミヤマザクラ・ニリンソウ・ラショウモンカズラ・アマドコロ・バイカモ・オオカメノキ・ヤチトリカブト・ノビネチドリ・シロバナヘビイチゴ・ホンワサビ・ズミ(コナシ)・シロバナエンレイソウ・マイヅルソウ・キジムシロ・ツマトリソウ・エゾムラサキ・ズダヤクシュ・カラマツソウ・ホンシャクナゲ・イワカガミ
(2019.6.2取材)

上高地白樺自然学校ガイド 松田俊雄さん (特定非営利活動法人やまぼうし自然学校 所属)

「上高地のガイドは15年くらいになりますかね。私は参加された方々となるべく会話しながらガイドしています。こちらからの一方通行になってもつまらないですからね。上高地をぜひ楽しんで、好きになってもらいたいですね。」
「明神の手前にワサビ沢というところがあるんですが、有名なところよりもむしろ誰も行かないような沢なんかが大好きですね。珍しい蝶なんかにも出会いますしね…。」
柔らかな口調でそう語る松田さんの眼差しからは、この大自然を心から愛しているような感じを受けました。

■お申し込み・お問い合わせ
上高地白樺自然学校
〒390-1516 長野県松本市上高地「上高地ホテル白樺荘」内
TEL 0263-95-2131
https://www.shirakabaso.com/guide/nature-school/

(2019年6月10日掲載)
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