日本近代登山の父、W・ウェストン
梓川の辺り、霞沢岳、六百山を望む巨岩に一人の男のレリーフがある
彼が初めてこの地を訪れてからおよそ130年
山を愛し日本を愛し、そして上高地を愛した異邦人は
日本近代登山の父として
世界一と讃えたその峻険を永遠に見つめ続ける
上高地の魅力を世界に知らしめた功労者
河童橋から徒歩約20分。霞沢岳と六百山を望む梓川のほとりに、英国人宣教師ウォルター・ウェストン(1861-1940)のレリーフ(浮彫胸像)があります。氏は登山家として日本各地の名峰を制覇し、明治24年(1891)上高地にも訪れて山案内人・上條嘉門次とともに北アルプスに挑みました。
そして明治29年(1896)、著書『日本アルプスの登山と探検』のなかで上高地の魅力を世界に称賛しています。「楽しみとしての登山」を日本に伝えた功労者として、日本山岳会はその栄誉を称えるとともに氏の喜寿を祝って、昭和12年(1937)梓川沿いの広場に額面型のレリーフを掲げました。ところが第二次世界大戦が勃発。敵国となった英国人のレリーフはわずか5年余りで取り外されてしまいました。
毎年6月第一日曜日は「ウェストン祭」を開催
日本山岳会に保管されていたレリーフは空襲により一部が焼損してしまいましたが、修復され昭和22年(1947)6月14日に現地に戻されました。この復旧式がウェストン祭の起源で、以降毎年6月の第一日曜日に開催されています。
日本にまだ「趣味としての登山」という概念のなかった時代、27歳で初来日し北アルプスをはじめとする日本の名峰を制覇したウェストン。上高地を世界に広く称賛し、登山の楽しみを日本人に紹介した氏の功績を称え偲び、日曜日の式典では、ウェストンレリーフ前にて献花や詩の朗読、合唱、記念講演などが行われています。前日に行われる徳本峠越えの記念山行は、ウェストン生誕100年の第15回(1961)から続けられています。
霞沢岳を望む梓川のほとり
ウェストン碑のほど近く、ひと息つける見晴らしの良い広場・ウェストン園地は、日よけや雨よけになる東屋も備えて、休憩に最適の場所です。園地前の梓川沿いからは霞沢岳や六百山の眺望が素晴らしく、絶好の撮影スポットとなっています。新緑の頃も然ることながら10月中旬ともなれば、梓川脇を彩るカラマツの黄葉や山頂の雪化粧のコントラストが鮮やかです。
ウェストン馴染みの清水屋旅館(現・上高地ルミエスタホテル)の近くから、世界に誇る上高地を永遠に見つめ続けるレリーフ。近代登山に多大な功績を残したウォルター・ウェストンの碑には、今なお多くの人々が訪れています。
*現在の円型レリーフは昭和40年(1965)に新たに制作されたものです。
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